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「Perfumeの掟」に込められたメッセージについて

東京ドームで披露されたパフォーマンス、
「Perfumeの掟」に込められたメッセージについて
僕個人の解釈を書きたいと思います。
以下、反論されたとき用の予防線などをいちいち張っていくのは
あまりにめんどくさいので
ここはひとつ、あえて振り切って断定的な言い回しで突っ切ろうと思います。
非常に偉そうな文体になりますが、
そうしないと回りくどくて、もっとウザい文章になってしまうので
どうかご了承下さい。

また、便宜上リキッドやカウントダウンで披露されたVer.のPerfumeの掟を
「Perfumeの掟1.0」
今回東京ドームで披露されたVer.を
「Perfumeの掟2.0」として区別したいと思います


以下本論です



冒頭、重低音と共にセンターステージから3体のマネキンがリフトアップしてくる
Perfumeの掟1.0やシークレットシークレットでも明らかなように
Perfume演出におけるマネキンとは、
記号化された自分であり、シミュラークルであり、過去の自分でもある。
大きな言い方をすれば「あなたの頭の中にあるPerfumeのような何か」の存在を
アイロニカルに表現したオブジェクトである。
1.0においてPerfumeはそのマネキンに、自分たちの過去の象徴として
インディーズ時代の衣装を着せ、それを丁重に「埋葬」する事で
自身を「更新」させてみせた

では2.0においても同じ「更新」が行われたのか?
違う。それは開始30秒で否定された。
今回マネキンが着ていたのは
3人がほんの5分前まで着ていた衣装だったのだ。

これには極めて具体的な含意がある
その意味とは「過去」の時間的定義が1.0と全く異なる、という点から導き出される。
1.0において、ブレイク以前とブレイク以降という分断線によって定義された「過去」が
2.0においては「5分前の自分」に当てはめられている
では過去の時間的定義の細分化が意味するものは何か?
それはすなわち、更新の「加速」だ

まずこの時点で一つの宣言がなされた

3人は間髪入れず次のシーンへ
背後の巨大スクリーンに映し出された携帯電話のような映像に、
自身の生年月日を入力する。
個人が持つ最も素朴なアイデンティティの象徴であるところの生年月日を
複製可能な数値に還元する行為。
それは記号としてのPerfumeと
実存を持った大本彩乃・樫野有香・西脇綾香という人物を
無関連化させるメタファーに他ならない

そもそも複製時代の芸術とは
あらゆる作品や、時に表現者そのものが記号化することを受け入れる前提で形作られている、
いわば記号化の美学だ
しかし3人は、そのデフォルト設定自体を仮想敵と見立て激しく挑発し、批評する。
そしてその仮想敵の射程には
彼女たちを記号消費の対象としているメディアやマーケットはもとより
それらを受容し、消費し続ける我々ファンも含まれている可能性すらある。

自らのアイデンティティを自らの手によって記号化した3人。
ではこれによって何が起こるのか?3人はどうなってしまうのか?
場内に響く3人の声が、メタレヴェルからその疑問に答える

『右手と右足が同時に動いています』

すなわち実存と記号の乖離による「像」のズレだ。
歯車が狂い始める。

また声が響く
『10人のかしゆか』
コピー&ペーストされた、実体を持たない映像としての「かしゆか」の中で
生身の「樫野有香」が踊っている
10年の活動の中で産み出され続けてきた記号化された自分(または自身のシミュラークル)
その中で今までもこれからも踊り続けることを宿命付けられた存在たる
Perfumeに対する自己批評が、執拗に繰り返される

『あ~ちゃんアップ』
レーザー銃を手にしたあ~ちゃんがセンターステージに浮上する。
同時にマネキンがそれぞれの島に現れる。
マネキンが着ている衣装は何だ?
またしても数分前まで自分たちが着ていた衣装だ。
夢のステージに上がるために用意された純白の衣装
それすらも僅か数分後の今、破壊し、更新させようというのだ
しかも数分前に自分たちが一礼までして足を踏み入れたこの神聖なるステージの中央から。

エンドステージ下手からのっちが現れる。
過去自分たちが発表した楽曲、その象徴的な振りを演じながら
過去から現在、そして未来へと歩を進める。

そしてPerfumeの掟2.0において、とりわけ重要なのは
ここからの演出だ。

以降は、なるべくややこしい議論を避け、時系列を細かく追っていく事に注力したい。
とにかくここからのくだりで重要なのはPerfumeの掟2.0において
「ステージ上での3人の距離が、そのまま3人の心の距離のメタファーとして機能している」
というひとつの仮定である。
この仮定によってPerfumeのもうひとつの宣言が、
そしてMIKIKO先生が3人に伝えたいメッセージが見えてくる。

話をステージに戻そう

のっちが「現在」を通り過ぎた瞬間に
上手の島と下手の島から同時にかしゆかとあ~ちゃんが現れる
そしてそれぞれがそれぞれのパフォーマンスを披露する。
「遠く離れた場所」で
それぞれ別々の方向を向き、一心不乱に踊る。

一連のパフォーマンスが終わる頃
のっちがセンターステージに移動している。
そこで今度はのっちのソロパフォーマンスが始まる

センターステージとは、言い換えれば左右の島のちょうど中間だ。
今まで「遠く離れた場所」でそれぞれ踊っていた2人、
その中間にもう一人のメンバーが立つことによって変化が起こる。

あ~ちゃんとかしゆかは、何かに気付いたかのようにセンターへ走りはじめる
こうしてのっちのダンスパート中、遂に3人が揃う

そしてパフォーマンス後半、
3人が「目の前の何か」を掴む動きをしたまさにその瞬間、
曲が止まってしまう。
まるでその「目の前の何か」が手から零れ落ちるかのように

遅すぎたのだ

自らを記号化し、実存を失い、3人の距離が離れ
バラバラに踊っていた3人に訪れる結末とは何か?
それは「故障」だ
武道館のコンピュータシティを彷彿とさせるノイズ
苦しそうな呼吸音
もはや完全に静止するかと思った次の瞬間
静寂の中に再び声が響く

3人が掴みかけた「目の前の何か」の答えがここで明かされる
それはとてもシンプルな言葉だった

『息を合わせて』

このパフォーマンスで最も重要なポイントはこの一言だ
全てはこれを言うための壮大な前フリと言っても過言ではない

加速していくPerfumeから誰一人振り落とされないために、
自分自身を決して見失わないために、
3人の心の距離を絶対に離さないために、
息を合わせて、心を一つに

図太いビートが再び鳴り始める
息を合わせた3人が完璧に踊り切り、5万人の大歓声が東京ドームに響き渡る
そして次の瞬間、3人は再びマネキンと化し奈落へと下がっていく

当然だ
加速を宿命付けられた3人には
その一瞬ですら既に過去とされるのだから

そしてリフトダウンした生身のマネキンは
わずか数秒後に再び浮上する

何のためか?

最早言うまでもない
数秒前の自分たちを更新するためにだ

何事も無かったかのように「VOICE」が鳴り響く。

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dnts

Author:dnts
ネット育ちの映像作家

twitter : @dnts3

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